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善意と悪意の法律用語としての意味は?一般的な用法とは違うので注意です

法律に関係する言葉
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法律用語には「善意」「悪意」という言葉があります。

一般的な用語としては、善意は良い心や親切な気持ち、悪意は害を与えようとする意志、というような倫理的な意味合いを持ちますよね。

ところが、法律用語としては、このような一般的な用法とはかなり違った意味を持っています。

この記事では、「善意」と「悪意」の法律上の意味について、分かりやすく説明しました。

善意の意味は?

法律上の「善意」とは、一言でいうと「知っている」という意味です。

一般的な意味での「善意」は、他人や物事に対して親切な心や良い意図を持って行動することを指しますよね。

周囲を思いやり、助けたいと考える心からくる行動や態度を表しています。

例えば、困っている人を助けることや、親切で誰かのために何かをすることが善意の行動と言えるでしょう。

一方で、法律的な善意の意味は、ある事実を知らないこと、または信じていることを指します。

例えば、何かを購入する際に、その物が盗品であるという事実を知らなかったり、または騙されて盗品でないことを信じて購入した場合、その購入者は「善意」ということになります。

実際の法律の事案としては、民法の意思表示の例がよく取り上げられます。

民法94条1項では、「相手方と共謀して行った虚偽の意思表示は無効」と規定されています。

例えば、Xが自分の所有している土地に何らかの不都合が生じ、それを避けるために、Yと共謀して自分の土地を売却したと偽装する場合、この取引は無効となります。

ところが、94条2項では「前項の規定による意思表示の無効は、善意の第三者に対抗することができない」とされています。

どういう意味かというと、Yがその家をZに売却した場合、Zがその偽装を知らなければ、Zは合法的にその土地の所有権を保持し続けることができるということです。
この場合、Zは善意の第三者に該当するというわけです。

逆に、元の所有者であるXは、Zから土地を取り戻すことができないということになります。

その他、法律の世界以外では、政治の場で「知らない」という意味で「善意」という言葉が使われるのをよく見かけます。

政治のニュースや国会答弁などで、「善意で金銭を受領した」という場合、事情を知らないで金銭を受け取ったという意味になります。

政治の世界でも不正な献金や裏金問題など色々ありますよね。

そういうときに、詳しい事情は知らないという意味で「善意」がよく使われます。

悪意の意味は?

続いて、法律用語の「悪意」とは、一言でいうと「知っている」という意味です。

一般的な意味での「悪意」とは、他人に対して故意に害を与えたり、不利益をもたらす意図を持つ心理状態を指しますね。

他人に対する敵意や悪感情を伴い、意図的な危害や不正行為を引き起こす動機となることがあります。

悪意は単なる怒りや不満とは少し異なり、明確に危害を加える目的がある場合によく用いられます。

対して、法律用語としての「悪意」とは、特定の事実や他人の意図を知っている、または信じている状態を意味します。

例えば、何かを購入する際に、その物が盗品であるという事実を知っていた場合、その購入者は「悪意」ということになります。
また、何かを売るときに、それが盗品であることを知っているのに売った場合、その販売者も「悪意」になります。

法律上悪意であるかどうかは、特に契約や不法行為などで重要なポイントになることが多いです。

こちらも具体的な法律事案をあげると、民法704条の不当利得返還義務がよく取り上げられます。

不当利得とは、簡単に言うと、法的な根拠がないにもかかわらず、他人から利益を得ることを意味します。

ここでは詳しい説明は省きますが、不当利得は返還しなければならず

  • 利益を得た者が善意の場合:現存の利益
  • 利益を得た者が悪意の場合:利益と利息、損害を与えた場合はその損害の賠償

がその範囲となります。

民法703条で「法律上の原因なく他人の財産又は労務によって利益を受け、そのために他人に損失を及ぼした者(以下この章において「受益者」という。)は、その利益の存する限度において、これを返還する義務を負う。」と規定されています。

ですが、民法704条では「悪意の受益者は、その受けた利益に利息を付して返還しなければならない。この場合において、なお損害があるときは、その賠償の責任を負う。」と定められており、利益を受けた者が自分に法律上の根拠がないことを知っていた場合は、知らなかった時より返還義務が重くなるということです。

例えば、従業員が会社から誤って高い賃金を受け取っていた場合、その過払い金についての事実を従業員が知っていたとします。

この場合、会社は従業員に対して過払い分を返還するよう求めることができます。
また、過払い分に利息を加算して返還を求めることも可能ということです。

さらに、過払いによって会社が何らかの損害を被ったときは、その損害賠償も請求できることになります。

まとめ

以上が、法律用語の「善意」と「悪意」の意味となります。

基本的に、「善意=知らない」「悪意=知っている」と簡単に覚えておけば大丈夫でしょう。

法曹関係の職業に就いていたり、法律の勉強にどっぷり浸かっている場合は、普段の生活でも法律用語の意味として捉えがちになります。
一般的な意味で、善意や悪意を使うことはあまりないかもしれません。

職業あるあるなので、逆に注意したいところではあります。

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