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自治事務と法定受託事務の違いとは?機関委任事務との関係は?

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行政法
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地方公共団体が行う事務には様々なものがありますが、現在大きく分けて、自治事務と法定受託事務の2種類に分けられます。

以前は4種類の事務がありましたが、地方分権改革の一環として、上記の2種類に統一されてシンプルなものとなっています。

この記事では、地方公共団体の自治事務と法定受託事務について分かりやすく説明しました。

特に批判の強かった機関委任事務が廃止され、解体されたことは、自治事務と法定受託事務を理解する上で重要なポイントにもなるので、この点についても触れています。

自治事務とは?

自治事務とは、地方自治法第2条8項で規定されているとおり

地方公共団体が処理する事務のうち、法定受託事務以外のものをいう。

と定義されます。

自治事務という言葉から、地方公共団体が本来行う事務とイメージされるかもしれませんが、実際にはその範囲や内容はもっと複雑です。

法定受託事務については後ほど説明しますが、自治事務が条文にあるような控除説的な定義になったのは、地方公共団体の事務は様々なものがあり、それを1つの概念として定義することが難しいからと考えられています。

また、自治事務の具体例としては

  • 国民健康保険の給付
  • 介護保険サービスの提供
  • 小中学校の設置管理
  • 住民基本台帳の事務
  • 飲食店営業等の許可

などがあります。

これらは、法律や政令により事務処理が義務付けられるものです。

ただし、法律や政令で定められていない場合でも、地方公共団体が任意に行う事務もあります。
例えば、各種助成金の交付公共施設の管理などがその一例です。

法定受託事務とは?

国または都道府県が本来行うべき事務のうち、地方公共団体に委ねられた事務のことを、法定受託事務といいます。

  • 国→都道府県または市町村に委ねられた事務:第一号法定受託事務
  • 都道府県→市町村に委ねられた事務:第二号法定受託

の2種類があります。

こちらも、地方自治法第2条に規定されているとおりです。

法定受託事務は、効率的な事務処理と国民の利便性を考慮して、都道府県や市町村が担当するように設定されたと言えるものです。

第一号法定受託事務

第一号法定受託事務は

法律又はこれに基づく政令により都道府県、市町村又は特別区が処理することとされる事務のうち、国が本来果たすべき役割に係るものであつて、国においてその適正な処理を特に確保する必要があるものとして法律又はこれに基づく政令に特に定めるもの

と定義されます。

地方自治法第2条9項の1に定められているとおりです。

具体的な事務の一覧は地方自治法の別表に記載されています。

例をあげると

  • 国政選挙の事務
  • 旅券(パスポート)の発券事務
  • 生活保護に関する事務
  • 戸籍事務
  • 国道の管理

などがあります。

第二号法定受託事務

第二号法定受託事務は

法律又はこれに基づく政令により市町村又は特別区が処理することとされる事務のうち、都道府県が本来果たすべき役割に係るものであつて、都道府県においてその適正な処理を特に確保する必要があるものとして法律又はこれに基づく政令に特に定めるもの

と定義されます。

こちらも地方自治法第2条9項の2に定められており、具体的な事務も第一号法定受託事務と同じように別表に記載されています。

第二号法定受託事務の種類は少ないですが、一例をあげると、地方選挙(各都道府県の議会選挙や知事選挙)の事務があります。

機関委任事務はなぜ廃止された?

地方公共団体が行う事務は、現在は自治事務と法定受託事務の2種類ですが、以前は公共事務団体委任事務行政事務機関委任事務の4種類もの事務に分類されていました。

2000年に地方分権一括法が施行された際に、機関委任事務は廃止され、残りの3種類の事務は自治事務に一括されます。

また、機関委任事務は、自治事務と法定受託事務に移行したもの、国が直接行うようになったもの、そして完全に廃止されたものがあります。

図で表すと、以下のようになります。

では、なぜ機関委任事務が廃止されたのかというと?

簡単に言えば、地方公共団体の自立性を大きく損なうものだったからです。

機関委任事務は、地方公共団体が国から委任されて行う事務で、法的には国の事務とみなされます。
この制度の下では、地方公共団体は国から直接の指示を受け、地方議会の介入は限定されていました。

具体的には、機関委任事務に関しては地方公共団体が条例を制定することはできず、国は広範な指揮監督権を持っており、国の指示に従わない場合には、都道府県知事に対して職務執行命令訴訟を通じて代執行を行うことが可能でした。

当然このような状況は地方自治の精神に反するとの批判が高まります。
そして、機関委任事務が廃止されるに至ったというわけです。

機関委任事務が廃止されることにより、国と地方はそれまでの上下関係から、互いに協力しあう対等な関係を築くものと捉えられることになります。

もちろん、都道府県と市町村も同じように対等な関係として位置づけられます。

まとめ

自治事務と法定受託事務の内容は、地方自治法の条文で規定されているので、まずはそれをしっかり押さえておくのが大切ですね。

また、法定受託事務は法律とその法律に基づいた政令によって定められ、地方自治法の別表に該当する法律とともに事務が載っているので、一度確認するのをおすすめします。

地方分権改革が始まってから数十年が経ちますが、今もその流れは続いています。
そのため、地方公共団体の事務がさらに増えることもあり得るでしょう。

地方公共団体の新たな権限や責任については、常に注目しておきたいところです。

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